幼児教育といってもさまざまな種類があり、どんな特徴があるのか、どんな考え方なのか、どのような教育方法でどのような教材を使うのかなどわからないことが多くあると思います。
今回は、幼児教育の種類についてそれぞれの特徴などをプロが徹底解説します。
今さら聞けない幼児教育とは?
種類を見ていく前に、幼児教育とは?について、解説しておきます。
幼児教育とは、就学前の子供に対して行う教育全般をいいます。
「教育」といっても、就学後に行う学力向上のためのものではなく、脳の成長、社会性や協調性など心の成長を促すために行うものです。
習い事や幼児教室に通うことももちろんですが、幼稚園や保育園、家庭、地域社会との繋がりなど、幼児の生活に関わる全てが幼児教育と言えます。
また、幼児教育の目的は「勉強ができる子を育てるもの」ではなく、生涯における人格の形成や学習の基盤をつくることに重点をおいています。
幼児教育では学習の基盤をつくり、学習に対する意欲、好奇心、探求心、自主性、主体性、社会性、協調性などを育て、また、脳の力を活かすため右脳、左脳それぞれの能力が最大限引き出します。
なお、幼児教育について、詳しく知りたい方は、こちらのページも参照してください。
幼児教育にはどんな種類がある?
そんな幼児教育には、考え方ややり方には正解はありません。
結論から言えば、その子に合った幼児教育をしてあげるのが正解です。
そこで、ここからは世界中で研究されている、様々な幼児教育の種類(考え方やメソッド)を解説します。
その考え方ややり方を知った上で、我が子に合うかどうか?、親の考えと近いのか?などを判断していきましょう。
モンテッソーリ教育
モンテッソーリ教育は、モンテッソーリ教育は100年以上の長い歴史があり、子どもが自らを育てる能力「自己教育力」を育て、『生涯学び続ける自立した人間』を育てる教育法です。
子どもは、誰に教えられたわけでもなく、食べるようになり、歩き出し、話すようになります。
これは、子どもが自らを育てる力が備わっているというのがモンテッソーリ教育の根本的な考え方です。
モンテッソーリ教育の内容は0~3歳、3~6歳で異なります。
0~3歳
①粗大運動の活動・・・体育要素の運動ではなく、日常生活での全身運動をさします。乳児期の歩行までをサポートします。
②微細運動の活動・・・手や指先を使った運動。握る、叩く、落とすなどの運動を行います。
③日常生活の練習・・・粗大運動と微細運動を合わせた活動です。日常生活における環境への適応を促します。衣服の着脱や植物の世話なども日常生活の練習に含まれます。
④言語教育・・・ことばの獲得では、モンテッソーリ教育の「言語教育」に従い、こどものことばの発達に合わせて、細かいステップを用意し、語彙力をつけていきます。
⑤感覚教育・・・子どもは吸収することが得意で、吸収したものは感覚教具によって整理されるとモンテッソーリ教育では考えられています。発達段階に応じた感覚教具を取り入れ、感覚の洗練を促します。
⑥音楽・・・音楽を聞く、楽器を使う、踊る、歌うなど、子どもの成長に刺激を与えます。
⑦美術・・・絵を描いたり、粘土遊びの活動を行います。表現の自由を楽しむ活動です。
3歳~6歳
①日常生活の練習・・・自分の体を思い通りにコントロールする能力を身につけます。子どもはできないのではなく、やり方を知らないという考えに立ち、やり方を教示します。自分でできることを増やすことは自立へと繋がります。具体的には、はさみを使う、食器を洗う、掃除をする、飲み物を注ぐ、包丁を使うなどです。日常生活に関連する多くの活動を行います。
②感覚教育・・・3歳を過ぎた子どもは感覚器官が成長して、さまざまな感覚刺激に敏感です。その発達した感覚器官を利用して活動するのが「感覚教育」です。感覚に刺激を与え活動することで、多くの情報を集めることができたり、知的発達、情緒的発達が見込めます。感覚教具は「対にする」「段階づける」「分類する」という3つの目的があります。これらを通してモンテッソーリ教育では、学力の基礎を作り上げます。
③言語教育・・・発達の段階に合わせて言語教育を行い、豊かな語彙力を身につけます。最終的には文法を獲得することができます。日常生活の練習や感覚教育で養った力で、言語能力が育つよう工夫がされています。
④算数教育・・・モンテッソーリ教育の算数教具は、数量が具体的な物で示され、子どもたちが扱いやすいものとなっています。そのため、想像しやすく苦手意識を持たずに算数に取り組むことができます。
⑤文化教育・・・小学校でいう社会や理科を扱います。子どもの興味を広げることを目的としています。総合的学習に近いものもあります。
モンテッソーリ教育に必要なものは、年齢に応じた教具と整えられた環境、援助する大人です。自己教育力を伸ばすことを目的としているので、教具を使い自発的に活動をさせます。大人はあくまでも見守り、自発的に活動しやすいように援助することが役割とされています。
モンテッソーリ教育は、個別活動をベースとした自発性を重んじる教育が特徴です。また、個別活動だけでなく社会性を身につけるために縦割りクラスで活動するのも特徴のひとつです。
参考:Montessori 日本モンテッソーリ教育綜合研究所
シュタイナー教育
シュタイナー教育も100年以上の歴史があり、一人ひとりの個性を尊重して、個々の能力を最大限に引き出す教育方法です。
『自由な生き方ができる人間』を育てることを根本的な考えとしています。
心身のバランスを重視し、年齢に合わせた教育法が提唱されています。
また特徴的な点として、テレビやキャラクターものの禁止があげられます。
自らの意思で行動ができる人間です。また、乳児期などには強い刺激を与えず、安心感をもてる環境づくりに重点をおいています。それと関連して、生活リズムを整えることも安心感を与える材料の一つとされています。イベントや習い事など決まったことを決まった日に繰り返すことで、子どもに安心感をもたらすと考えています。
シュタイナー教育は学力の向上よりも人間形成を目的としているのも大きな特徴です。
年齢に応じた教育を行うシュタイナー教育では、0~7歳、8~14歳、15~21歳で区切り、各時期に合わせた教育を行います。
0~7歳
体の発達が重要とされる時期で、たくさん動くことを重視しています。そのため、勉強やテレビなどは教育から取り除かれます。記憶力が十分に発達していない時期であるため、教えるより真似をする教育法を行っています。
自由に体を動かすということは、子どもの意思を育むことにも繋がります。
8~14歳
心の発達に重点を置く時期で、音楽や美術など芸術にたくさん触れ、感情の発達を促します。
15~21歳
体と心の成長を促したあとは、頭を育てる時期に適しています。
思考力や自我を育むことを目的としており、一般教養だけでなく高等数学や論文などを学びます。また、パソコンやインターネット、テレビなどはこの時期に触れるようになります。
シュタイナー教育では、教育方針は示されていますが、具体的な教育内容やプログラム、教材は示されていません。そのため、教育者や教育環境により異なります。
ただ、その中でも共通している事柄もあります。
・一貫教育
→初等教育、中等教育を分けず12年間一貫した教育。また、8年間は担任が変わらない。
・芸術活動
→「オイリュトミー」「フォルメン」はシュタイナーが生み出した科目です。オイリュトミーは、音楽に合わせて体を動かし、感情や図形などを表現するものです。フォルメンは、幾何学模様を色を使い描画し、集中力を養い、指先の訓練を行います。
・エポック授業
→全ての学年の1時間目に毎日行う110分授業です。授業内容は国語、算数、理科、社会で2~4週間集中して学ぶ授業です。授業の終わりには、エポックノートを毎回書き、発表をおこないます。
レッジョ・エミリア・アプローチ教育
レッジョ・エミリア・アプローチ教育は、子どもの個性や意思を尊重して、それぞれの感性を活かすことが最重要であるという教育です。
子どもが自由に表現する力やコミュニケーション能力、探求心、考える力などを育みます。
レッジョ・エミリア・アプローチ教育の特徴は3つです。
①自主性と協調性を育むプロジェクト活動
レッジョ・エミリア・アプローチ教育でのプロジェクト活動とは、1つの事柄に対してある一定の期間にわたり、子どもと一緒に取り組む活動のことです。
具体例でいうと、発表会をするにあたって子どもたちが「どんな演目をやるのか」「どのように練習をするのか」「クラス全員でやるのか、グループにわかれてやるのか」など話し合いを行います。大人は指示を出すのではなく、一緒に参加をします。
これを繰り返すことで、自主性や協調性、探求力、自分の役割を見出す力が養われるようになります。
②創造性を育む
活動をする環境にアトリエを設け、自由に遊びながら想像力を養える活動をサポートします。この活動が行える環境を整えることが重要だと考えています。また、アトリエスタ(美術専門家)、ペダゴジスタ(幼児教育専門家)のプロが加わり、創造的活動を行うのも特徴の一つといえます。
③ドキュメンテーション
子どもたちの活動の様子を残した動画や写真などをみんなが見えるところに掲示する取り組みです。保護者が活動の様子を把握できることよりも、子どもたちが掲示をみて次の活動に活かすことを目的としています。視覚的にこれまでの活動を振り返る場面を作り上げます。
ピラミッドメソッド
ピラミッドメソッドが一番重点をおいているのは『自分で選択して決断できる力を養うこと』です。
遊びから学ぶスタイルなので、遊ぶ意欲を掻き立てる保育環境づくりや、テーマをもった「プロジェクト」という保育活動を行っています。
ピラミッドメソッドの特徴は「4つの基礎石」「目に見える保育環境」「プロジェクト活動」です。
4つの基礎石
4つの基礎石とは、子どもの自主性、保育者の自主性、寄り添う、距離をおくという基本理念です。この4つの基礎石をベースに、十分に整えられた保育環境が重要だと言われています。
目に見える保育環境
保育環境を整える上で、目に見える形で遊びの準備をすることは、自律性を養うことに繋がります。
子どもが自主的に遊びに取り組むのに、どこでなにをして遊ぶのか選択できる環境になるからです。
遊びでは少人数または一人で遊びます。
プロジェクト活動
プロジェクト活動の目的は、テーマをもち狙いを明確に与えることです。
プロジェクトのテーマは既に11個用意されおり、その中から子どもの発達に応じてプロジェクト活動を行います。
ドーマンメソッド
ドーマンメソッドはもともと、脳に障害のある子どもたちを救うために開発された教育です。
この研究が元となり、6歳までの子どもは、障害の有無に関係なく、脳に適切な刺激を受けることで脳が活性化し発達するという方法論が生まれました。
ドーマンメソッドの特徴は、「乳幼児期は脳が最も発達する時期」「新生児の頃が大切」「子どもの探求心を伸ばす」です。
ドーマンによると、人間の脳は6歳までが最も成長する時期で、この時期に人間の脳の約80%が完成するとされています。
脳の成長には、五感を通して脳に刺激を与え、運動することが重要です。
その脳への刺激を与える方法として、ドーマンメソッドの教育方法の一つであるドッツカードがあげられます。
ドッツカード
ドッツカードは五感を刺激するので、乳幼児期には特に効果が得られるとされています。
ドーマンメソッドは学力の向上や人間力の向上を目的としたものではなく、乳幼児期の脳の発達を促すことで、脳が持つ能力を最大限に引き出すことを目的としています。
ニキーチン教育
ニキーチン教育法はロシアのニキーチン夫妻が提唱したものです。ニキーチン夫妻が実際に7人の子育てに実践した方法が、そのままニキーチン教育法となっています。
ニキーチン教育法では、子どもの可能性を信じ、その子がもつ力を最大限に引き出すことに重点をおいています。
日本で言うところの、『可愛い子には旅をさせよ』と近い考え方で、多少の危険が伴っても、重傷にならない程度で見守り、経験させることを大切にしています。
ニキーチン教育法で幼児期に養うべきと考えられているのは、注意力、記憶力、反復する能力、考える力(物事を解決する力)です。
中でも最も重要視しているのは「考える力」で、この力を養うためには知的能力が必要になるというのがニキーチン教育法の根底です。
ニキーチン教育法で代表的なのが、積み木教育です。
具体的には、子どもに積み木で作った図形の絵を見せて、子どもの好奇心が掻き立てらるように誘い、同じ形を作らせます。
このとき、たとえできなくても手を貸さず、強制することもしてはいけません。
もしできなければ、次回いつやるのかを伝えます。
約束の日がきたら、挑戦してみるかどうかを子どもに確認し、取り組んでもらう。
できたら大げさに褒める。
この繰り返しを行うのが積み木教育です。
この成功体験が子どもが成長するきっかけと考えています。
石井式教育法
石井式教育法とは、漢字をメインにした教育方法です。
石井式教育法の考えとして、「幼児期の言語教育は人間の知能に大きな影響を与え、能力を伸ばすカギである」というのが根本にあります。
漢字をメインにした石井式教育法は、漢字を視覚的に捉え、幼児期にはひらがなよりも漢字から始めた方がよいという考えに基づいています。
漢字教育を幼児期から行うことで、漢字とかなの混じった文章に触れることができ、自然に漢字を学び語彙力がつきます。
また、基礎学力の向上にも繋がります。
漢字は複雑だからこそ、ひらがなよりも判別することが簡単で、幼児期に取り入れると能力を伸ばすことができると考えられています。
ヨコミネ式教育法
ヨコミネ式教育法では、自立して生きていける力をつけるために「学ぶ力」「体の力」
「心の力」の3つに重点をおいています。
ヨコミネ式教育法における子どもの自立とは「自ら考え、自ら判断し、自ら行動し実践すること」です。
学ぶ力
読み・書き・計算を通して自ら学ぶ力を育てます。学力の向上ではなく、生きるために必要な知識を自ら学ぶ力を育みます。
体の力
運動に関する能力は6歳までに大きく発達するという考えのもと、走る・泳ぐ・柔軟性・体操を通して、バランスのいい体づくりを促します。
心の力
子どもが自分自身でできることを増やし、経験を積ませることで、問題を解決する力などを育てます。
ヨコミネ式教育法では、就学前に倒立や側転、逆立ちができる、英語劇を行うことができる、掛け算ができるといった成果がみられます。これは、競争心や真似をしたがる、少し難しいことをしたがる、認められたいといった子どもの心理を利用することで成し遂げられています。
また、もう一つの特徴として「才能開花の法則」があります。これは、子どもが「できるのはおもしろい→おもしろいから練習する→練習することで上手くなる→ステップアップしたい」の積み重ねで子どもの能力を引き出すものです。
七田式教育法
七田式教育法の理念は、『未来を生きる子どもたちが、大きな志をと奉仕の聖心をもち、自らリーダーシップをとれる子どもに育てること』です。
子どもがもともともっている可能性を最大限引き出すことに重点をおき、認めて褒める教育を実践しています。
特徴としては、幼児期に特に発達すると言われている右脳のトレーニングを行っていることです。成長に伴い左脳のトレーニングも行い、バランスのとれた脳の発達を促します。
具体的には、フラッシュカードトレーニングや暗唱、指先の運動などを行っています。また、認めて褒めることは子どもの豊かな心を育むとして、とても重要視されています。
幼児教育にはどんな種類がある?まとめ
幼児教育には、学力の向上を目的とするものや人間力の向上を目的とするものなどさまざまな種類があります。
幼児教育の考え方や方法を深く理解することで、受けたい教育法や子ども合った教育法を見つけることができます。
幼児教育にとって大切なことは、子どもの意思や気持ちを尊重するということです。
幼児教育を受けるときには、子どもと一緒にさまざまな角度から検討してみるのがおすすめです。